2023年1月22日に世界ランキング1位を保持したまま引退した国枝慎吾さん。国民栄誉賞の授与も検討されているほどの実績を残してきた車いすテニスのパイオニアで、多くのテニス選手からリスペクトを受ける偉大なテニス選手です。
国枝さんが達成した記録の中でも非常に達成者の少ない記録が『ゴールデンスラム』です。国枝さんが達成するまでに5名しか達成していない記録なのですが、どういったものなのでしょう。その難しさと共にご紹介していきます。
グランドスラムとは
ゴールデンスラムの解説の前にまずは達成しなければならないテニス グランドスラムについて解説していきます。
グランドスラムとは、国際テニス連盟が定めるテニスの下記主要4大大会(全豪・全仏・全英・全米)のことを指し、その全てを制覇することも指します。
全豪オープン(オーストラリアン・オープン)
全豪オープンはオーストラリア、メルボルンで1月に行われる4大大会で、唯一南半球で行われます。オーストラリアの1月は猛暑に見舞われ、真冬の北半球で調整している選手たちは真逆の環境のもとコンディション調整の難しさとの戦いでもあります。コートサーフェスはハードコートです。
全仏オープン(フレンチ・オープン)
全仏オープンはパリのローランギャロスで5月末から6月にかけて開催されます。4大大会で唯一クレーコートで大会が行われることが特徴です。
クレーコートは、他のコートに比べると球足が遅く、粘り強いストロークプレーヤーが活躍するため、パワーとスピードを武器にする多くの一流選手が苦戦を強いられる傾向があります。ラリーが長くなり、心身ともにタフな試合になることが多いのも特徴です。
全英オープン(ウィンブルドン)
テニスのあらゆる大会で最も権威があるのが6月最終週に開幕し、芝のコートで行われる全英オープン(ウィンブルドン)です。
芝のコートは球足が速く、ボールが弾まず、滑るため、ビッグサーバーや力強いストロークをする選手が大いに力を発揮します。また、大会が進むにつれ芝が剥げてくることにより、イレギュラーバウンドが起こりやすくなるため、その対応も勝ち上がるための条件となります。
全米オープン(USオープン)
グランドスラム大会の最後として8月末から9月にかけて開催されるのが、ニューヨークのフラッシング・メドウを舞台とする全米オープンです。
試合中に上空を行き交う飛行機の騒音や、開閉式の屋根が閉じられると観客の話し声が場内に反響することで発生する音も選手の集中力に影響を与えると言われており、プレー以外でもタフな戦いとなります。また、全米オープンも全豪オープン同様、ハードコートで行われますが、全豪オープンよりも高く弾み、スピンも効くため、高い技術力で戦う選手たちが力を発揮します。
ゴールデンスラムとは
ゴールデンスラムとは、前述した4つの大会に加え、五輪も制覇することをいいます。
そもそもテニス グランドスラムを1つだけでも制覇するのも至難の業であり、それに加えて、4年に1度しか開催されない五輪でも金メダルを獲得しなければならない、というのは想像を絶する難易度になります。
生涯ゴールデンスラム(キャリア・ゴールデンスラム)
選手生活のキャリアにおいて、グランドスラムとオリンピックで優勝することを生涯ゴールデンスラムと言います。
過去に達成した選手は
- シュテフィ・グラフ
全豪:1988年 全仏:1987年 全英:1988年 全米:1988年 五輪:1988年(ソウル五輪)
※1988年に年間ゴールデンスラムを達成
- アンドレ・アガシ
全豪:1995年 全仏:1999年 全英:1992年 全米:1994年 五輪:1996年(アトランタ五輪)
- ラファエル・ナダル
全豪:2009年 全仏:2005年 全英:2008年 全米:2010年 五輪:2008年(北京五輪)
- セリーナ・ウィリアムズ
全豪:2003年 全仏2002年 全英:2002年 全米:1999年 五輪:2012年(ロンドン五輪)
- 国枝慎吾
全豪:2007年 全仏:2007年 全英:2022年 全米:2007年 五輪:2004年(アテネ五輪)
の5名のみです。昨年引退をしたレジェンド、ロジャー・フェデラーも未達のまま引退をしました。さらに現在の絶対的王者、ノヴァク・ジョコビッチでさえ、リオ五輪・東京五輪で金メダルを逃し、未達となっています。
さらに2022年には、車いすテニスで活躍している国枝慎吾選手がウィンブルドンでの優勝を飾り、悲願の生涯グランドスラムを達成しました。
最後に
今回はゴールデンスラムとは何かについて、達成した選手もあわせてまとめてきました。テニス グランドスラムも五輪もサーフェスや天候も大きく異なる中で勝ち抜かなければならないという難しさがあります。その中で達成している5名の選手は素晴らしい以外の言葉はみつかりせんよね。そしてその中に日本人選手がいる、ということは非常に誇らしいことです。次に達成されるとしても2024年のパリ五輪、ということになりますので、誰が達成するのか、楽しみに待ちましょう!